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【コラム】「水」と向き合う、6月の台風と印刷

「まだ6月なのに、もう台風が2つも?」と、天気予報を気にされている方も多いのではないでしょうか。
今回の台風7号・8号は、南の海から大量の「暖かく湿った空気」を日本付近の梅雨前線へと送り込んでいます。そのため、「台風が遥か南にあっても、日本付近で前線が爆発的に活発化し、前触れなく警報級の大雨が降る」という、非常に予測が難しく危険な性質を持っています。
この「急激な気圧と湿度の変化」は、実は私たち「大判インクジェット印刷」の世界にとっても、年間で最も技術と知識が試されるシーズンでもあります。今回は、私たちが日々向き合っている「湿気・熱・インク」の裏側を少し深掘りしてご紹介します。
1. 塩ビや合成紙も「湿気」で伸びる?寸法変化が生むコンマ数ミリの闘い
「プラスチック製の塩ビシートや合成紙(ユポなど)なら、水を吸わないから湿気の影響は受けないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、大判インクジェット印刷における本当の闘いは、その「構造」にあります。多くのインクジェット用塩ビシートの裏面には、施工用の「糊(粘着剤)」と、それを保護する「剥離紙(セパレーター)」がついています。この裏面の剥離紙が梅雨の湿気を吸うことで、シート全体が目に見えないレベルでわずかに「伸びる」現象が起こります。
プラスチック素材である合成紙も同様に、高湿度環境下ではシート表面に目に見えない微細な水分子の膜が張り、インクの着弾精度や静電気のバランスに影響を与えます。
ここで最も問題になるのが、「印刷位置とカッティング位置のズレ」です。

シートが湿気で伸びた状態でインクジェット印刷を行い、その後、後工程であるカッティングプロッター(自動切り文字・輪郭カットのマシン)にかける際、わずかな寸法の狂いによってカット位置がずれてしまうことがあります。コンマ数ミリのズレが命取りになるプロの世界において、この「湿気による素材の伸び」を見極める知識こそが、美しく正確な製品をお届けするための鍵となります。
2. プリンター内部の「熱と湿気」、そしてヘッド接触のリスク
さらに、大判インクジェットプリンターの内部では、インクを素早く定着・乾燥させるために、素材を一定の温度まで温める「ヒーター」が作動しています。ここに高い湿度を含んだシートが送り込まれると、プリンター内部の熱によって急激な状態変化が起こります。超精密なインクジェットプリンターの「印刷ヘッド」と「シート」の隙間は、わずか数ミリしかありません。湿気と熱の影響でシートが局所的にわずかでも浮き上がると、高速で動くヘッドがシートと擦れ、印刷面を汚してしまうだけでなく、最悪の場合は精密機械の破損に繋がります。
梅雨や台風の季節は、私たちが扱う資材や機械にとっても「一瞬の油断もできない期間」です。これはそのまま、屋外での看板施工や、お客様へのお届けの安全性にも繋がっています。外はあいにくの空模様が続き、激しい雨による視界不良や道路の冠水、交通機関の乱れといった危険が高まっています。皆様もどうぞ最新の気象情報をこまめにチェックされ、決してご無理をなさらず「安全第一」でお過ごしください。